マドレーヌ・ルメール 薔薇 水彩画
マドレーヌ・ルメール |Madeleine Lemaire (1845–1928)
薔薇 | Roses
制作年代|19世紀末〜20世紀初頭頃
技法|紙に水彩
額装サイズ|W74 × H57cm
価格|¥600,000(税込)

淡い色彩の中に咲きこぼれる薔薇。
白から淡いピンク、そして画面の中心に据えられた深い紅色へ。
マドレーヌ・ルメールは水彩特有の透明感を生かしながら幾重にも重なる花弁を軽やかな筆致で描き出しています。
一輪一輪を克明に写し取るのではなく輪郭をところどころぼかし、背景や葉の色彩と合わせることで生まれる柔らかい雰囲気。
その一方、折れ重なる花弁や棘を残した茎には確かな生命感があり、甘美なだけではない薔薇の姿が表現されています。

画面の手前には散った花弁が置かれています。満開の花だけでなくそこから零れ落ちたものまで描くことで、作品には時間という要素も含まれています。
華やかさのなかに静かな余韻を感じさせる一作です。

マドレーヌ・ルメールは19世紀後半からベル・エポック期のパリで活躍したフランスの画家・水彩画家です。
1864年にサロンへ初出品しその後も花、人物、肖像などを数多く発表しました。
オルセー美術館が公開するサロンの記録にはRosesやLe panier de rosesをはじめ、数多くの出品作が確認できます。
なかでも薔薇はルメールを象徴する主題でした。
現在もランス美術館には水彩によるPanier de rosesが所蔵されており、同館所蔵作は本作と同様、厚手の紙に水彩で薔薇を描いた作品です。
また、パリのカルナヴァレ美術館にも薔薇を描いたルメールの作品が収蔵されています。
この作品をHEATHでご紹介したいと思った理由は単純に美しい薔薇の絵だからではありません。
マドレーヌ・ルメールが生きた時代の空気をそのまま今の暮らしの中へ持ち込むことのできる作品だと感じたからです。
彼女のもとには芸術家や文学者、パリの社交界の人々が集いました。マルセル・プルーストもそのひとりでルメールはプルーストの最初期の著作『楽しみと日々』の挿絵も手掛けています。
そうした背景から当時のサロンに飾られ人々の会話や音楽、景色を見つめていたと推測できます。

そして、この作品の魅力を語るうえで欠かせないのが当時のオリジナルの額装です。
植物を思わせる細やかな装飾が幾重にも施された華麗な金箔張りの額。
柔らかく軽やかな水彩とエレガントな額装という二つの要素が美しく調和しています。
絵と額、両方を合わせてひとつの作品として眺めたくなるお品物です。
暮らしのなかに一枚の絵を迎えることの愉しさを、静かに教えてくれる作品としてHEATHでご紹介いたします。