エミール・シャペロン 書斎 油彩画
エミール・シャペロン|Émile Chaperon(1868–1946)
《赤いランプのある室内》|Intérieur à la lampe rouge
制作年代| 20世紀初頭頃
技法| 油彩・キャンバス
サイン| 画面左下にサイン
サイズ| 横56.5 × 縦48 cm
価格| ¥700,000(税込)

深い赤の椅子に腰掛け机に向かうひとりの女性。
壁には大小さまざまな絵画が掛けられ、傍らには小さな家具や陶磁器、床には絨毯が敷かれています。
この作品でひときわ目を引くのが画面中央に置かれた赤いシェードのランプです。
室内を煌々と照らすのではなく女性の手元と机の周辺だけに柔らかな光を落とし、その小さな灯りを中心として、赤、褐色、金、深い青といった色彩が広がっています。
シャペロンは細部を克明に描き込むのではなく、家具や絵画、陶磁器、絨毯を柔らかな筆触で捉えながらそれらを一つにまとめ雰囲気まで伝わるよう画面を組み立てています。

何かを書いているのでしょうか。
それとも手紙を読んでいるのでしょうか。
物語を説明しすぎないところもこの小さな室内画の魅力です。私たちは少し離れた場所から誰かの静かな時間をそっと覗いているような感覚になります。

エミール・シャペロン(1868–1946)はフランスの画家・舞台装飾家。
父は19世紀フランスを代表する舞台装飾家のひとり、フィリップ・シャペロンです。エミールは父に学び、若くしてその工房に参加しました。1904年の資料には1884年から父の仕事に加わっていたことが記されています。
彼はパリ・オペラ座、コメディ・フランセーズ、オデオン座などの舞台装飾に携わる一方、画家としても活動し1910年代から1920年代にかけてサロン・デ・ザルティスト・フランセ、サロン・ディヴェール、サロン・ド・レコール・フランセーズ、サロン・デ・ザンデパンダンなどに出品した記録が残されています。
シャペロン家の仕事は現在もフランスの公的コレクションによって伝えられています。
特にフランス国立図書館(BnF)のBibliothèque-musée de l’Opéraにはエミールと父フィリップが1895年に共同制作したオペラ《Frédégonde》の舞台装置の素描が所蔵されています。
また1900年のパリ万国博覧会に際して制作されたグラン・パレ、パレ・ダンタンのトロンプ・ルイユ装飾にもフィリップとエミール・シャペロンの名が記録されています。
父フィリップの作品についてはオルセー美術館にも所蔵記録があり、エミールはそうした19世紀フランスの大規模な舞台・建築装飾の伝統を直接受け継いだ世代でした。

シャペロン父子の仕事は当時のフランスを代表する舞台芸術と密接につながっています。
たとえば1897年のパリ・オペラ座で初演されたMessidorではエミール・ゾラが台本を手掛け、フィリップとエミール・シャペロンが舞台装置を担当した記録がフランス国立図書館に残されています。
つまりエミールは単に室内画を描いた画家ではなくベル・エポック期のパリにおけるオペラ、演劇、装飾芸術の現場を実際に知る人物でした。

この絵を選んだ理由は美しいものに囲まれて暮らす。ということ自体が描かれているように感じたからです。
壁に掛けられた絵に家具、陶磁器、絨毯、そして机の上の小さなランプ。
どれかひとつが主役なのではなく、人と長い時間をともにしてきたものが集まりひとつの心地よい空間をつくっています。
舞台装飾を生業としたシャペロンらしく画面は小さくともそこにはひとつの舞台のような奥行きがあります。
華やかな金色の額縁に対して描かれているのはとても静かな日常。その組み合わせもこの作品のみりょくです。
暮らしの中に美しいものがあることで何気ない時間まで豊かになる。
Galerie HEATHが大切にしている感覚と通じるものを感じご紹介することにしました。