ルネ・ラリック スミレ
ルネ・ラリック|René Lalique(1860–1945)
スミレ|Violettes
制作年代|1921年デザイン
技法|オパルセントガラス、型押し成形・フロスト加工
サイズ|直径 17.9 × 高さ 15 cm
価格|¥800,000

円筒形のすっきりとした胴から朝顔のように大きく開く口縁。
その内側を覗き込むとスミレの葉が一枚一枚、円を描くように連なています。
この作品の美しさは正面から見るだけでは完結しません。
少し高い位置から眺めると乳白色のガラスの中から青白い光を帯びた葉が浮かび上がり、さらに真上から見るとそれらが花のようなひとつの円環をつくります。

葉脈から伸びる線はそのまま胴へと続き植物の茎を思わせる細い縦のラインとなって器全体を支えています。

透明、乳白、淡いブルー。
オパルセントガラス特有の色彩はひとつに定まらず光の方向や強さによって静かに変化ます。
写真からも葉の部分には青白い光が宿り、胴には柔らかな乳白色が現れるこの素材ならではの奥行きがよく感じられます。

ルネ・ラリック(1860–1945)は19世紀末のジュエリーから20世紀のガラス芸術へと活動の中心を移しアール・ヌーヴォーからアール・デコへ至る時代を代表するフランスの装飾芸術家です。
メトロポリタン美術館もラリックが1912年頃までにジュエリー制作からガラスへ活動の軸を移し、香水瓶、花器、建築装飾、テーブルウェアなどを手がけたこと。さらに1921年からアルザスの工場でガラス製造に取り組んだことを紹介しています。
Violettesがデザインされた1921年はまさにその転換期にあたります。
自然を写実的に再現するのではなく葉の形を反復させ、器そのものの構造へと変えていく。
本作にはジュエリー作家として培われた自然観察とガラスという素材を建築的にも使っていたラリックの感覚が同居しています。
本モデルはラリック研究の基本文献であるフェリックス・マルシラックのカタログ・レゾネにも作品番号930として収録されています。
また、1993年に東京の小田急美術館で開催されたルネ・ラリック展の展覧会カタログにも《Violettes》が掲載されていることが確認できました。

花器でありながら、花を生けて完成するわけではない。
何も入れず、ただそこに置くだけで光を受けたスミレの葉が静かに浮かび上がります。
そして見る位置を変えるとまったく違う表情を見せてくれる。
100年以上前に生まれたガラスでありながら、今尚新しい感動を与えてくれる。
ラリックの作品の中でも特に好きなデザインです。